仮称「天理市環境マスタープラン」試案

〜天理市民が将来にわたって安心して生活できる環境づくり〜

                                                                              2005.9.25.

                                                             環境市民ネットワーク天理

1 はじめに

   天理市は、昔「布留の里」と呼ばれたように、布留川流域を中心とした豊かな自然環境の中で多くの人々が生活してきた地域です。また、幕末に生まれた天理教の発祥の地として、今では全国から、また、世界各地から多くの人々が集う国際的な宗教都市でもあります。

   しかし、近年、住民生活の近代化や消費生活の変化にともなって、天理市においてもさまざまな面で環境の悪化が進み、私たちが住む身近なところでも解決しなければならない多くの課題が山積しています。また、将来の生活に対しては希望が持ちにくいという深刻な状況にあります。 このような環境の急激な変化や破壊は、天理市のみならず、世界中で起きている現象です。しかし、今後は環境の悪化による負荷を少なくし、より良い環境を次の世代に残していくために、私たちは、今、考え、そして行動しなければならない岐路に立っているのではないかと思います。

   そこで、私たち「環境市民ネットワーク天理」は、天理市の将来における良好な環境の確保と、そのための施策や行動などについての計画を立案し、仮称「天理市環境マスタープラン」試案をここに提案するものです。市民、事業者、行政の三者が、共に考え、共に協力しながら、明日の天理市の環境の改善や再生に向けた第一歩を踏み出したいと考えています。この提案が、今後、天理市の行政や事業所活動、並びに市民参加活動に生かされることを強く期待します。
 私たちは、自分たちが生まれ育った町天理市を「布留の里」にちなんで「布留里・天理(ふるさと・てんり)」と呼ぶことにより、先人が住み続け、多くの生き物たちを育んできた豊かな環境の保全とその再生を目指したいと思っています。

2 基本的な考え方

(1)計画の目的

   私たちが住んでいる「布留里・天理」は、豊かで美しいに環境のもと、多くの生命とともに豊かな心も育んできました。この環境を守り育て、将来の世代に伝えていくことは、現在を生きる私たちの責務です。そのために、私たちが何にどう取り組めば良いか、行動すれば良いかを具体的に明らかにすることが、仮称「天理市環境マスタープラン」の目的です。

(2)計画の視点

   計画の策定にあたって、以下の五つの視点を大切にします。

  @当面解決が迫られている課題へのビジョンと、今後100年間を見通した長期的な環境ビジョンづくり。

  A天理市の自然環境に適した循環型社会づくり。

  B天理市らしさを重視した地域環境ビジョンづくり。

  C市民・事業者・行政が共に参加し、共に行動する「天理市ローカル・アジェンダ21」づくり。

  D環境の大切さを理解し守り育てることができる町づくり、人づくり、心づくり。

 

3 計画の基本理念

   本計画は、国の「環境基本法」及び「環境基本計画」の理念である「循環」「参加」「国際的な取り組み」を参考にしながら、天理市においては次のような社会を築くことを目指します。

(1)私たち人間は、自然の一構成員として生活する社会を目指します

   最近、「人と自然の共生」という表現がよく使われますが、その考え方には「人間と自然は対等な立場」という前提があるように思います。私たちは、「人間は自然の一部である」という考え方に基づいて、人間が自然環境の中で調和し、生かされる喜びを感じられる社会を目指します。私たちが自然から受けてきた恩恵を見直し、これ以上、自らが自然生態系を壊さず、また、壊した生態系の再生に努力することの責任が今問われています。

私たちは、龍王山などの青垣の山々を水源とする布留川の水資源や谷間につくられた美しい棚田、そして里山に広がる雑木林などから大きな恵み受け、支えられてきました。これらの貴重な自然環境の保全と再生に努めるとともに、自然の奥深さをさぐり、先人の知恵に学びながら、行動に移していきます。

(2)環境負荷の少ない資源循環型社会を目指します

私たちは、日頃の生活や事業所活動によって生じる環境への負荷をできる限り少なくすることを目指します。廃棄物の量を減らし、リユース、リサイクルなどに努めます。将来的にはゼロ・エミッション(有害な廃棄物・排出物を一切出さない)社会を築きます。そのためには、私たちの生活様式や事業活動の仕組みを変えていくことが求められます。

(3)市民・事業者・行政の協働による参加型の社会を目指します

環境問題への対処にあたって、これら三者が単独で活動したり、互いにどれかに依存したりする状況では問題がなかなか解決しないことがわかってきました。そのためには、三者がそれぞれの責任と役割を果たすとともに、共に学びあい、共に助け合い、共に行動する参加型社会が今求められます。

(4)世界に開かれた町・天理として、自然環境や歴史・文化環境の保全と再生を目指します

今日の環境問題は、一地域の問題としてとらえるのではなく、地球規模で考える必要があります。そして、問題解決のためには世界中の人たちが互いに手を取りながら行動することが求められています。世界中から多くの人々が訪れる国際宗教都市の特徴を生かし、環境問題についても世界に発信できるよう努力します。憩いと安らぎが感じられる水と緑に囲まれた住環境を作り出します。

また、古代においては、天理市から桜井市にかけて初期大和朝廷が起こり、政治的、文化的な日本の中心でもあったことを思い起こし、先人の知恵に学びながら歴史や文化を守り、そして自然環境の保全や再生に努めます。

 

4 天理市の現状と課題

   天理市は、昭和29年4月1日、近隣の3町3村(丹波市町、櫟本町、柳本町、二階堂村、朝和村、福住村)が合併し誕生しました。当時の人口は51,031人でした。平成16年には市政50周年を迎え、人口は70,000人を超えました。この間に、天理市の環境も大きく変化してきました。昔に比べるとずいぶん近代化され生活しやすくなった面も多いのですが、逆に、自然環境は昔の方が良かったという意見があります。豊かな自然の中で遊んだ子どもの頃が懐かしく思い起こされます。

   そこで、今後の天理市の環境計画を考えるにあたって、現状と課題について以下に少しまとめました。

(1)自然環境

   農業など地場産業の低迷、高齢化、過疎化が進行していることから、休耕田、手入れされていない里山などが増加し、災害防止や二酸化炭素吸収など森林の機能が低下しています。また、放棄された山林が産廃業者の手に渡り、水源地汚染問題に拍車がかかることが予想されます。

(2)都市環境

   過去、天理市の市街地には幾筋もの川が流れていました。しかし、それらの川は、現在はほとんどが暗渠化されています。せっかく水と親しむ環境があるにもかかわらず、活かされていないのが残念です。せめて現在ある川だけでも市民が親しめる川に活かせられないでしょうか。一級河川・布留川の市役所東側や丹波市小学校周辺ではホタルが帰ってきています。水は綺麗になってきているのです。街中にホタルが舞うまちにしたいものです。

   天理市内には約3,000本の街路樹が植えられており、天理を代表する景観になっています。ところが、近年、イチョウやケヤキ並木などの街路樹が不適切ともいえる管理によって枯死寸前の状態になっています。街路樹を植え続けた先人たちは、今の街路樹の姿をどう思うのでしょうか。街路樹の木陰により真夏の道路の気温が2〜5℃下がるという報告もあります。「緑あふれる天理」をつくりたいものです。

(3)歴史・文化環境

   日本の歴史は、私たちが住んでいる「大和盆地」から始まったといって過言ではありません。日本最古の道「山の辺の道」は湿地帯と山すそとの間にできた道です。また、道沿いには三角縁神獣鏡が出土した黒塚古墳を始め数多くの歴史・文化遺産があります。天理は日本の中心地の一つだったのです。

   日本で唯一、宗教名が市の名前になったのが天理市です。世界中から多くの人たちが訪れるところです。そして年に何度かは、天理市の人口以上の人で街があふれることもあります。世界に開かれた町として、表玄関である天理駅前や町の景観のあり方を考える時期にきています。

(4)ごみ・廃棄物環境

 ごみ問題は日本が抱える重要な環境問題の一つです。家庭ごみは市民一人ひとりが減らす努力が必要ですが、事業ごみも事業者による減量化への努力が必要です。

   天理ダムは、市民の飲み水の約3割を供給していますが、近年、ダム周辺にごみの不法投棄や産廃業者による処分場が急増し、水源地が汚染される可能性が急速に高くなっています。

(5)人的環境 

   「ボランティア」、「NPO」、「NGO」という言葉は、1995年の阪神淡路大震災をきっかけに日本に根付いてきました。その一つ、「環境市民ネットワーク天理」は、毎年、「布留川をきれいにしよう」という川の清掃活動を、百数十人の市民参加を得て実施しています。自分たちの町のために、無償で天理の環境を守ろうとする市民が増えてきています。しかし、現実には、身近な環境に関心を持ち、さまざまな行事に積極的に参加したり、発言したりする市民は、まだまだほんの少数に過ぎません。このような人たちが活動しやすい環境づくりが必要となっています。

 

5 環境に配慮した計画案と行動指針

(1)布留川を中心とした水環境の整備と再生に向けて

@市民の水瓶である天理ダムの水質保全に努め、安全な水道水の供給に努めます。

  A天理ダム上流の環境変化に着目し、水源の保護を目標とした水源の森作りに努めます。

  B川の改修にあたっては、自然の川の再生を念頭に、多自然型工法等によって行います。

  C川の中で多くの生き物がすむことができるよう、水質の改善や自然流量の確保に努めます。

(2)市街地を水と緑に包まれた安らぎの空間へ

@市街地を水と緑に囲まれた憩いと安らぎの空間作りに努めます。

  A市の遺産とも言える多くの街路樹や植え込みを適切に管理し、緑豊かな回廊作りに努めます。

  B暗渠になってしまった多くの水路を再生し、せせらぎの聞こえる清らかな水辺空間作りに努めます。

(3)子どもや老人、障がいをもった人や病弱の人にとっても配慮された快適な空間へ

@どんな人にとっても歩きやすく住みやすい町づくりに努めるとともに、バリアフリー空間を広げます。

  A不意の災害に備え、市民みんなが安心して生活できる環境の整備に努めます。

B騒音、振動、大気汚染などの公害が出ない生活や町づくりに努めます。

(4)ごみ問題の解決と循環型社会の実現に向けて

@ごみゼロの生活、いわゆるゼロ・エミッションの生活を目指し、市民、事業者ともに徹底したごみの減量化に努めます。

  A「もったいない」を合い言葉にリユース、リサイクルなど、資源の有効利用に努めます。

  B市内で出た廃棄物は、市内で処理することを念頭に、廃棄物の処理のあり方について、根本的な検証や検討を行い、その改善に努めます。

  C山間部や河川、路肩などへのごみや廃棄物の不法投棄がなくなる社会を目指します。

  D企業活動や事業所等では、ごみや廃棄物を出さないシステムの導入、奨励に努めます。

(5)環境に配慮した生活様式の導入に向けて

@市民みんなが環境負荷の少ない生活様式を目指して努力します。

  A路肩にごみやたばこの吸い殻などを捨てないなど、環境マナーの向上に努めます。

  B水とともに電気、ガスなどのエネルギーは有限なものと考え、これらを湯水のように使う生活をやめます。

  C農薬を使用しない有機栽培などによって作られる安全な農作物の購入を進め、安全な食料の確保とそれを支える農家への支援や農業振興に努めます。また、地産地消運動を進めます。

  D台所や風呂場から合成洗剤、廃油、残飯などを流さない、環境に負荷を与えない生活様式に切り替えていきます。

  E戸外でのレジャーにおいても、環境に負荷を与えない工夫を行います。ごみは出さず、出たごみは持ち帰って自分で処理するという生活スタイルを定着させます。

  Fごみや廃棄物の処理は、役所や処理業者の仕事と考えないで、自分で処理することを基本と考える生活に改めていきます。

(6)環境に配慮し持続可能な産業の発達に向けて

  @環境を顧みない開発や土地利用、企業活動を見直し、環境に配慮した活動を奨励します。

  A過去の環境負荷に対応し、改善できる処理技術の開発やその産業の育成に努めます。

  B省エネルギー対策に努め、効率的なエネルギーの利用に努めます。

  C水の有効な利用、水の循環システムの再生に努めます。

  D物の循環的利用システムを築くことに努めます。

  E環境に配慮した製品の流通に努めます。

  F環境に関わる活動の輪を広げるために、エコ地域通貨「やまと」を活用し普及に努めます。

  G事業所は、環境保全のために、自主的、積極的に行動するための方針、目標、計画、実行、評価のシステムを取り入れることに努めます。(環境マネジメント)

(7)互いに学び、話しあい、支えあうことができる人づくり・仕組みづくりに向けて

@将来にわたって、子孫が安心して生活できる環境づくりとそれを目指す学習に努めます。

A身近な環境に目を向けるとともに、常に自然と触れあい向き合う生活を目指します。

  B環境や命の大切なことについて、将来を背負う子どもたちへの環境教育に努めると共に、大人への生涯学習の場などを通して環境問題についての啓発にも努め、互いに学びあう仕組みを

つくります。

  C地域での清掃活動、講演会、環境展など、環境イベントに積極的に参加し協力します。

  D環境に関する情報を公開し、市民誰もが必要な情報を得ることができるシステムを築きます。

  E市民、みんなが快適な生活が維持できるよう、互いに促し、励まし、支え合える仕組みづくりに努めます。

  F環境問題は、市内だけの問題ではなく、より広い地球規模での環境問題と考え、行動することに努めます。

  G環境の面でも、世界に発信できる環境都市「生命と環境の町づくり天理」を目指します。

 

6 おわりに

   私たちの今後の環境について考えるとき、基本は自分の足下にあると考えます。日頃、自分は環境についてどう配慮した生活を送っているのか、またどんな考え方をしているのか、まずは、我が身を振り返ることから始めなければならないと考えます。その上で一人の力には限りがあり、互いに力を合わせることができる仲間づくりが必要になります。そして、小さな歩みでもいつかは大きな流れになることを信じて、努力を続けることで未来は開かれていくものと思います。

私たちのこの地道な歩みが、いつかは「布留里・天理」で生活して良かったと思えるような町づくりとなり、市民みんなが共に歩み、一日も早い「環境の町・天理」づくりが実現されることを願ってやみません。 


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