〜天理ダムの上流に建設予定の産業廃棄物最終処分場の問題とは〜

みなさまもテレビ・新聞の報道や天理市の広報紙「町から町へ」などでご存じのように、市民の飲み水
(上水道)の水源の一つである天理ダムの上流、天理市苣原町に、大規模な産業廃棄物処理施設の
設置許可の申請がなされていましたが、平成13年2月20日、奈良県はその設置を許可しました。
この産業廃棄物処理施設の設置計画に対して、天理市や市議会は当初から反対意見を提出するなど
反対の姿勢を示してきました。しかし、これらの意見を無視するような形で許可がなされ、市や市議会
はもとより、多くの団体や市民が許可の撤回を求めています。
環境市民ネットワークでも、このことについて話し合ってきました。天理市民の将来の水環境
や生活環境を考えた場合、この計画を容認することはできません。環境市民ネットワーク天理
としても設置には絶対に反対です。
ここでは、今回の産業廃棄物処理施設(安定型最終処分場)のどこに問題があるのか。市民の皆様
に理解していただけるよう、できるだけわかりやすく説明をしてみました。なお、説明にあたっては関係
資料をもとにしていますが、現時点では予測で説明せざるをえない部分があります。
○どこに計画されているのですか?
産業廃棄物処理施設は、天理市の市街地を流れる布留川上流にある天理ダムのさらに上流、天理市苣原町の山間部に計画されていま
す。
苣原町は、国道25号線ぞいにある戸数40戸あまりの山村集落です。この集落のすぐ上流に、今回の産業廃棄物処理施設が計画されて
います。なお、この予定地には、すでに山を崩して作られた残土の埋め立てによって、いくつもの小山が高くそびえています。
苣原町は、今でも、夏にはゲンジボタルやヘイケボタルがたくさん飛び交い、小川にはドジョウやカワニナなどが生息しているなど、失われ
つつある日本の里山の自然がかなり残されているのどかな山村です。
もし、大規模な処理施設ができて、指摘されているような汚水や有毒物質が流れ出た場合、それは苣原町の中央を流れる小川に流入する
ことになり、周囲の土壌や田畑も汚染されて影響が出るものと思われます。そして、下流の天理ダムにも流れ込むことになります。上水道の
約34%を天理ダムから取水している天理市民にとっては、命にかかわる深刻な問題が発生することが予想されます。
○どんな処理施設ができるのですか?
計画されている産業廃棄物処理施設は、産業廃棄物の「安定型最終処分場」といわれる施設です。事業所などで出された廃棄物を産業廃
棄物といいますが、その中で、安定5品目といわれる廃棄物が埋め立てられる計画です。
産業廃棄物の最終処理施設は、廃棄物の内容によって、次の3つの型に分けられます。その中で、今回は?の安定型最終処分場が計画
されているのですが、奈良県は汚水等の流出を懸念して?の管理型のしくみを一部取り入れることを許可の条件にしています。



■安定型最終処分場
安定5品目の廃棄物を処理する施設
で、汚水や有毒物質はいっさい出ない
ことになっています。
■管理型最終処分場
有害物質の溶出試験をしなければならない
廃棄物や安定5品目の中で有害物質が混
入している廃棄物などを処理する施設です。
■遮断型最終処分場
有害物質の溶出試験の結果、判定基準
を超えた廃棄物を処理をする施設です。
今のところ奈良県にはないそうです。
○安定5品目ってなんですか?
安定5品目とは、事業所が出す廃棄物の中で次のものをいいます。
廃プラスチック ゴムくず 金属くず ガラスおよび陶磁器くず 建設廃材
安定という名がついているように、地中に埋めても汚水や有毒物質はいっさい出ない廃棄物のことです。ですから、処分場には堤と囲いがあ
るくらいです。しかし、最近の調査では、安定5品目の廃プラスチックの中には、環境ホルモンの1種が溶けだして地下水や川を汚染する場合
があるという報告もあります。
また、別のところでも触れますが、安定5品目として埋め立てられた廃棄物の中に、5品目以外の廃棄物が混入していることが指摘されてい
ます。安定5品目からそれ以外の廃棄物を取り除くことは、不可能に近いと言われています。
なお、新しい法律では、少しでも5品目以外の廃棄物が含まれている場合は、5品目とは扱わずに処理するように指示されています。
○どれぐらいの規模の施設が計画されているのですか?
天理市苣原地区に計画されている産業廃棄物処理施設は、安定5品目を扱う安定型最終
処分場で、次のように非常に大規模な施設と考えられます。
埋め立て面積・・・・・・・・・・・ 51,219平方メートル
埋め立て容量・・・・・・・・・・・ 681,200立方メートル
その内、廃棄物の埋め立て容量・・・ 545,000立方メートル
数字だけでは、ぴんとこないと思われますので、もし、甲子園球場を施設にたとえますと、
約15mの高さがある外野スタンドの上までいっぱいに、しかも「てんこもり」にした量が約50
万立方メートルです。また、産廃のひどい不法投棄で有名になった香川県の豊島(てしま)
で投棄された廃棄物も約50万立方メートルですので、ほぼ同じ量に当たります。

香川県豊島の投棄現場(津川敬著「ごみ処分」より
○なぜ問題があるのですか?
天理市が市内全戸に配布した「町から町へ」の折り込みチラシによりますと、問題点として次の3点があげられています。
1・安定5品目として大量に搬入される廃棄物に対し、有害物の付着混入まで検査することは、物理的に不可能である。
2・条件となった「遮水シート」については、シートの強度、耐用年数に疑問が残る。埋立物の突起やシートの劣化によってシートが破断すれ
ば、土壌や地下水に直接、有害物質が浸透する危険がある。
3・廃棄物の埋め立てを終了し、処分場が廃止された後、年月が経過してから発生しがちな水質や土壌の環境汚染に対する管理責任が極
めてあいまいであり、地元に大きな負担が残ってくる。
以上が、天理市が問題にしている主な点です。安定型の最終処分場であるにもかかわらず、このような問題点が出るのは、次に示しますよう
に、現実に奈良県内で埋め立てが進行している安定型最終処分場でさまざまな問題が起きており、その問題点の改善が非常に難しいことが
何よりの根拠です。
○なぜ、新しい法律ではなく古い法律が適用されるのですか?
今回、奈良県は、産業廃棄物処理施設の許可を2年あまり前までのいわゆる旧法に基づいて行いました。これは、産業廃棄物処理業者が、旧
法から新法への切り替えの直前に許可申請の手続きをしたために、法的には旧法で処理することとなったものですが、ざる法と言われた旧法
と新法の違いは非常に大きく、もし、新法が適用されていたら、苣原の処理施設の設置許可は無 かったでしょう。
国は、平成10年6月17日に、産業廃棄物処理法を改正しました。これは、産業廃棄物処理に関するトラブルが多発するようになり、世論に
おされた形で、処分場の設置には、旧法にはなかったいくつかの条件を付け加えました。主な改正点は、地元市町村長の意見書と環境アセス
メントが義務づけられたこと、そして、処分される廃棄物の内容の確認や処理方法についてもかなり厳格なものとなりました。
今回、施設設置の許可申請をした業者は、この厳しくなった新法の適用を逃れるために、旧法から新法への切り替えのわずか2日前に駆け
込み申請をしたのではないかと言われています。住民の生命や環境にかかわる重要な問題が、法の網をくぐるような形で許可されたことに怒
りをおぼえます。この問題について新しく監督官庁となった環境省は、新法への改正の趣旨を正しく判断され、毅然とした対応をされるよう求め
るものです。
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