奈良県内の安定型最終処分場と言われる施設で、さまざまな問題が発生しています。その中で、室生村と西吉野村の例を紹介しますが、桜井市でも問題になっています。
 
○室生村の場合
室生村の北端の染田と多田という二つの地区に、1992年に最初の処分場がつくられました。以来、この地区の住民にとっては悪夢の日々が続くことになりました。明らかに安定品目とは思われない廃棄物が連日のように大型ダンプによって運ばれ、悪臭や汚水に悩まされる日々が続いています。
○西吉野村奥谷地区の場合
西吉野村の奥谷地区に安定5品目を埋め立てて宅地造成をするというふれ込みで、1989年に最初の産業廃棄物の投棄が始まりました。この業者はその後も違法行為を繰り返しました。これに対して、住民は裁判に訴え、勝訴しました。 積み上げられた廃棄物は高さ100mにもなり「産廃ピラミッド」とも呼ばれていました。
 
○残土にも問題点が多い
専門家の研究によりますと、残土にもかなりの問題があると指摘されています。
 残土は、建設工事などにともなって生じた余剰の土砂や岩石などを言いますが、そもそもその土砂がどんな状態のものであったのか、わからないことが多いのです。工場の埋め立て地から多量の六価クロムという有毒物質が発見されたことも記憶にあります。
 残土そのものは無害と考えられ、経済活動の発展とともに各地で多くの埋め立てが行われてきました。しかし、この残土の中に有害な物質が混入することが指摘されるようになり、残土についても実態をつかんで適切な対応が望まれています。
 天理ダムに流れ込む支流の谷でも、休耕田が次々と残土などによって埋め立てられています。この残土と言われるものの中に有害な物質が含まれいないか心配になります。
 
○天理の水はおいしいと思いますか?
 みなさんは、毎日使っている天理の水道水はおいしいと思われますか。
「大阪の水と比べると、まだましだ。」と思っておられる方も多いと思われますが、そんなことは言っておれない現状があることもわかりました。
 大阪の水道水と比べるとカビ臭さはないようですが、発ガン性があると言われているトリハロメタンという物質は、天理市の水からも見つかっています。その値も、最近1年間の豊井浄水場での平均値は31μg/lと、大阪市と変わらないかやや多いくらいだそうです。
 トリハロメタンは、水の中の有機物と塩素との反応によってできる物質のことです。トリハロメタンの値は、原水の汚れを表す一つのめやすになっています。きれいに思われる天理ダムの水もかなり汚れが進んでいると考えた 方が良いようです。
 これで上流に産業廃棄物最終処分場ができてさらに汚れが進むようになると、水道水としては使えなくなる日が来るのかもしれません。これ以上汚さないよう、水源を大切に管理する必要があります。
 
○天理の水道水は、どこが水源になっているのですか?
天理市の上水道の水源は、次の3つです。
    豊井浄水場・・・・天理ダムから取水しています。
    杣之内浄水場・・・地下水を汲み上げて取水しています。
    県水受水池・・・・室生ダムなどからの県営水道から取水しています。 

 天理ダムは、奈良県が布留川の総合開発事業として建設したダムで、昭和54年に完成しました。大和川流域の急激な宅地開発によって暴れ川となっていた大和川の治水対策が課題となっていました。天理ダムの主な目的は、洪水調節と農地防災ですが、天理市の上水道、さらに河川維持用水として使われています。
 これが「天理ダムは市民の水がめ」と言われるゆえんですが、ダムの上流には集落もあり、生活排水が流入しています。また、近年、ダム上流の田畑が次々と休耕田に変わりつつあり、そこに残土の埋め立てやごみの不法投棄などが起こるようになってきました。市では、農村集落の下水道普及を進めると共に不法投棄にはパトロールを行って水源を守る努力をされていますが、難しい問題もあるようです。  

豊井浄水場
 
○どうしたら市民の水源を守れるのでしょうか?
まずは、今回の産業廃棄物処理施設計画の許可を奈良県が撤回するよう市民みんなが理解し、努力することでしょうか。しかし、産業廃棄物だけでなく、一般廃棄物など、いわゆるごみ問題の根本的な解決無くしては問題解決を先送りすることになります。
 産業廃棄物処理施設の問題以外に、天理ダム周辺の環境の現状や私たちの生活から考えられることをまとめてみました。

1・私たちが、ごみが出ない生活、あるいはできるだけ少なくする生活に考え方を変える。そのためには、少しは今よりも不便になるでしょうし、
  そのための費用も必要でしょう。便利さと安さを追い求める生活には限界がきているように思われます。物を大切に長く使うという考え方が
  昔はありました。「もったいない」という心を見直す必要がありそうです。
2・ごみを川や山、そして道ばたに捨てない。昔から日本にはごみを川に流す風習があり、川にはそれらをきれいにする力がありました。今の
  ごみは川の力ではきれいにできないものが多く、また量があまりに多すぎます。天理ダムの周辺や林道のあちこちにごみが捨てられてい
  ます。だれが捨てるのでしょうか。4月からの家電リサイクル法の施行によって、家電ごみの不法投棄が増えないようにと祈らざるをえませ
  ん。
3・自然や環境の変化をしっかり見抜く力をつける。知らない間に、環境という言葉がテレビや新聞で毎日のように見聞きする時代になってき
  ました。それほど問題は多いのでしょうが、私たちはどれだけそのことを自分のことと感じているでしょうか。何かおかしいな、何か変わった
  なと感じることがあったら、なぜだろうと考えてみたいものです。天理ダムや布留川、そして天理の町も、昔とはすっかり変わってきたそうで
  す。
4・山の緑や水の大切さを考え直す。深い森は水をたくわえ、水を浄化し、生き物を育むと言います。その緑が失われていっています。天理ダ
  ムの上流では山が削られて、その跡に残土が高く積み上げられていっています。そこには、帰化植物のような雑草ははえても、どんぐりの
  なるような木は育ちません。水を守るには、森を大切にすることです。そのために、ダムの周囲は森で囲むようにすることがよいのではない
  かと思います。この試みは、いろんな所で実行されるようになりました。
5・水の大切さ、森の大切さ、命の大切さ、人は自然によって生かされているということを子どもたちにしっかり伝える。

 私たちの生活は、自然や季節の変化を忘れさせるような毎日です。子どもたちも、部屋の中でゲームに夢中になったり、塾通いなどで忙しい生活を送っています。自然は好きなように管理すればよいといった考え方さえ出てきています。人のおごりや欲、今風に言うと「自己中」と言うのだそうですが、悲しい言葉が流行しています。昔から日本人は「人は自然によって生かされている」という考え方を持ち続けてきたのですが、すっかり忘れ去られようとしています。もう一度この謙虚な考え方を見直し、次の世代につないでいきたいものです。 
 最後にずいぶんえらそうなことを書いてまとめとしてしまいましたが、「環境市民ネットワーク天理」は、今回の廃棄物処理施設の問題を機会に、これからの私たちの生活の在り方について、みなさんといしょに真剣に考えることができるようになればいいなと思います。

 
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